2023年8月15日
【自然の中で、突然の雨やカミナリにあった時に大切なこと】
【今日の実体験を元にした、アウトドアで身を護る上で大切なことのお話】
こんばんは「豪雨落雷土砂崩れ男」と成り果てたマツヤマです。
今日、晴れ時々曇りの予報なので釣りに東北の山奥の渓流に入りました。
が、突然の豪雨、そしてカミナリが降って来ました。せっかくなので今日僕が実体験した出来事を例に、アウトドアで大切な事をいくつか書いてみたいと思います。
今日の実体験と考えた事、行動したことを時系列で書いて記します。皆さんの登山や釣り、沢登りなどの参考になれば何よりです。
【1】
クルマで林道の奥まで入り、クルマを停め、釣りの支度をして沢に入りました。この時点では雨は降っていません。道も乾いています。天気予報は晴れ時々曇り、カミナリ警報は広域に出ていましたが黒雲は無し。晴れています。一応、ザックの中にレインウェアを入れました。しかし着ると暑いのでレインウェアは着ません。アブがイヤなのでベースレイヤーの上に長袖のシャツを着て山に入りました。
この山は初めての場所ですし、初めて入る沢です。東北の山奥なので装備は「熊スプレー」「ナタ」「キンチョール」「カラビナ数個」「スリング2本」「ザイル20m」を持っています。ちなみにザックはパタゴニアの16リットルです。
【2】
釣り初めて10分程で雨が降って来ました。今の僕はそれくらいでは驚かなくなっているので、小雨だったのでしばらく無視して釣りをしていましたが、雨粒が大きくなったのでシャツが濡れる前にレインウェアを着ました。
【3】
雨が止んだので脱ぎました。そうこうしているうちに魚(イワナ)が釣れてゴキゲンになったのですが写真を撮ろうとしていたら逃げられちゃいました。まぁいいやと思っていたらまた雨、今度は大粒の雨です。
【この時点で気をつけること】
雨により、川の水量が急に増える事がある。水深が10センチ増えるだけで川を渡れなくなる場合があるので注意が必要。
また、いる場所だけでなく、上流で雨が大量に降ると急激に水量が増える場合がある。落ち葉が流れて来たら要注意。すぐに上がること(この時点ではNO問題)。
また川から山側に脱出する際に、帰れる林道やクルマを川のどちら側に停めたか?(川は上流から下流に向いて右岸・左岸と呼ぶ)脱出できる方向をしっかり把握しておくこと。川を渡れなくなり帰れなくなる場合がある。
夏でも豪雨で身体が濡れたまま日没を迎えると低体温で命の危険がある場合がある。
【4】
しかしなんでまたこんなに雨が降るのだろう?僕が釣り出してすぐに雨が降るでは無いか?困ったものだ、でもいい魚釣れたからいいか♪となんだか面白くなって来て、雨を避けて大きな木の下で雨を避けてのんびり雨宿りをしながら自撮りをしました。
この直後にやってくるカミナリなんて知らないし、魚を釣った直後なのでゴキゲンです。
【5】
降ったり止んだりを繰り返していたら、雨粒が更に急激に大きくなると共に、空が暗くなり、ピカリと空が明るくなり、10数秒後に「バガッー!ドカドカバリーン!」という轟音が山じゅうに鳴り響く。震え上がるほどの轟音。カミナリである。家の中で聴く雷音と違い野外の谷間で聴く音はなんとも凄まじい。落ち葉もチラホラ流れてきた。こうなりゃ釣りどころの話じゃない。そそくさと納竿(釣りを止め竿を収めること)し、スタコラサッサと撤退する準備を始める。
【この時点で僕が意識した事、気をつけた事】
自分が居る地点の地形を理解すること。
僕がいた沢はV字の谷の底の部分である。左右には高い山がある。落雷は谷底にいる僕に落ちる可能性は少ないと思われるが、高い木もあり落ちる可能性がゼロではない。竿や金属は電気を通す。また谷底といえど高い木もあるので高い木の根元には近づかない。
まず気をつけたいのは落雷が近いか?遠いか?である。
近ければ退避場所を探す。遠ければより安全な場所への脱出を試みる。
【6】
カミナリが落ちている場所が近いか?遠いか?を測るには、雷の光と音の伝達速度の違いで把握する。カミナリが遠ければ、光ってから音が届くのが長い時間がかかる。光って音がすぐすればかなり近くにカミナリが落ちている(すぐ近くに落ちた時は光と音は同時に来る※子供の頃、寝ていた部屋から15mの隣の家の松に落ちた経験がある。光と音と衝撃が同時にきた。朝起きたら松は黒コゲになって裂けて煙が出ていた)
【この時点で僕が意識した事、気をつけた事】
僕は光ってから何秒後に音がするか?いつもカウントする。今日もしていた。
光る→「1.2.3.4.5.6.7.8.」といつも口で数えてカウントする。
今日もカウントした。今日は光ってから音がするまで、最初は18秒(かなり遠い)、1番近くて7秒であった。カミナリが近づいている、遠ざかっている、という事をカウントする事で知ることができる。数えて距離が分かったところでカミナリを防ぐ事は出来ないが自分が落ち着く。落ち着く事、冷静に判断できる事は大事だ。
「常に穏やかであれ」。
釣りだけで無くアウトドアの極意はすべからくSTUDY TO BE QUIET(穏やかなる事を学べ)である。
カミナリはそう近く無い。谷底だから直撃や感電の心配はさしてない。しかし、上流に黒い雲があった。カミナリが光っているのも上流の山の方角である。
今1番怖いのは、急激な増水である。
山、特に沢で増水は怖い。今いる地点では大した雨が降っていなくても、上流で急激かつ大量に雨が降った場合、命とりになる場合がある。増水によって流されるはもちろん、さっきまで膝下くらい(30センチ)だった流れが10センチ水量が上がるだけで、沢を渡れなくなる事もある。沢を渡れなくなると1番怖いのは、水が引くまで「帰れなくなる」ことである。
つまり、クルマや林道、街や民家のある対岸に渡れず「取り残される=遭難する」という事態になる。
そうなると、最悪なのはカミナリに打たれる以外には下のパターンがある。
A 無理して川を渡ろうとして流される→最悪のパターン→命の危険
B 水が引くまで対岸に渡れず、ビバーク(予定通りに進まず、山中で一夜を明かすこと)する→濡れた身体で夜の気温低下(さすがにテントや寝袋は持っていない)→かなりイヤだし命の危険ある
AもBも最悪死ぬ。
死ななくてもAは全身ズブ濡れになるし、Bはお腹も減るであろう。当然ヘッドライトはあるがこんな山の奥でヘッドライトだけで世を明かすのはイヤだ。熊だっている山の奥の森である。
そもそもこの時点ではいつ雨が止むか?わかったもんじゃ無い。もしかしたらこの後三日三晩雨が降り続くかもしれないのだ。台風だって来る。何言われるかわかったもんじゃ無い。
そーなるのはイヤなので、とっとと撤収する事にする。
今日クルマを停めたのは右岸だった。
なのでまずは右岸に寄って沢から上がる。もう決して左岸には行かないのだ。ちょっとでも左岸に上がった際に水が増えたらアウトである。左岸イヤイヤ男に俺はなる。サッサと愛する右岸の林道に登ることにする。来る途中でちょいちょいエスケープする為に確認していたので林道が走っているのは確認済みである。(当然携帯電話圏外だが先に地図データをダウンロードしてあるのでスマホのGPSでも上に林道が走っているのは確認できた)。
そうと決まればサッサと撤退である。
右岸に沿ってしばらく川沿いを歩いていたが、困った。
川岸が大きく崩れて崖になってる。とても歩けたもんじゃ無い。落差20mくらいか?落ちたら怪我ですむかしら?って崖である。
とはいえ、今来た道を戻って、増水するかも知れぬ川を歩くのもイヤである。沢を歩くという事は時々左岸に渡らねばならないという事だ、左岸はイヤなのである。
仕方ない、上を走る林道に直に上がるか?とココロを決める。
とはいえ、林道は30mほど上である。急な坂をよじ登らなければならない。20mの崖を落ちるのもイヤだが、30mの急坂を滑り落ちるのもイヤである。
(文を読み返してみると50になる男がイヤイヤばかり書いていて少し申し訳無いが御容赦願いたい。死ぬのも怪我するのも遭難するのも痛いのもイヤなものはイヤなのである。そしてこーゆー場合はひとつ判断間違えるとイヤな事になる可能性が高いのだ)
仕方がないから、滑って落ちそうなポイントではザックの中に入れていた、ザイルとカラビナとスリングを出して自分に取り付けて、滑り落ちたとしても、数メートル落ちるくらいで助かるように確保しながらズルズル滑る。ザイルは細い4mm✖️25mのお助けヒモだけどあると無いでは全然違う。
フェルト底のウェーダーで道も何にもない落ち葉だらけの急坂を登る。ところどころでザイルを使う。ハァハァ言いながら泥だらけになって30mの崖をよじ登る。雨はザバザバ降ってるおかげでとにかく滑る。途中、けっこう斜度が思ってたよりキツい事に気づく、滑って落ち出したら止まらないだろうし、ザイル使ってるから1番下までは落ちないとしてもきっとかなり痛いはずだ。汗が吹き出してくる。でも良かった、ザイル持ってて…。僕は東北の山の中で何やってんだろ?とか思いながらなんとか15分くらいエイエイやって林道まで登り終わる。
やった。ああヤレヤレだ。とにかくコレで命の危険は熊ぐらいのものだ。クルマまで歩こう。と思って額の汗を拭いたら、ウソのようにカミナリも雨も止んでいる事に気づいた。
汗びっしょりになって、クルマまで戻り、着替え、山を降りたら何事も無かったような美しい青空と夕焼けが広がっていた。
▪️この話のポイント
・レインウェア持ってく
・ヤバそうならサッサと釣り中止
・カミナリは光と音の差を数える
・増水は怖い
・どこに逃げるか決めておく
・今いる地形を把握しとく
・流されるのも遭難もイヤ
・ザイルは持っとけ
・熊にも注意
・常に冷静であれ