2022年2月22日
【妻がコートを取りに】
【実家に帰った】
【若く、出逢ったばかりの姿になって戻って来た…。】
【驚いた!突然戻ってきたら…】
【新婚当時の年齢になった】
【今までの全ての記憶が消えた妻】
僕が冬に最近よく使う、キャンプ用のバーナー「コールマン508A スポーツスター」というバーナーがある。
燃料はホワイトガソリン、気温が低い冬にキャンプする僕にはとても使いやすいバーナーで、ここ数年、冬のキャンプではメインのバーナーとして使用していた。
安定感があって、ポンピングしなければいけないけれど、手順を踏んでちゃんと付き合えば、誠実に返してくれる、派手さは無いけれど、液体燃料のバーナーを初めて使う人にはオススメのバーナーだ。
僕と508Aは少しづつ信頼関係を結び、僕は508Aの特徴を理解し、508Aはわがままで突然色々なところに連れて行く僕のリクエストにいじらしいほど従順に応えてくれた。
僕は彼女、508Aをあえてそう呼ばせてもらおう、だって、寒い一人きりのキャンプで温かな食べ物を作ってくれるのも、夜寝る前の湯たんぽのお湯を沸かすのも、朝の光の中コーヒーを作ってくれるのも508Aだったのだ。
まるで彼女か奥さんである。それどころか来客の多い僕のテントに、突然多くのゲストが訪れても、嫌な顔一つせずに10人分の美味しい鍋を作ってくれたり、突然の撮影にも、落として傷をつけてしまっても、文句一つも言わずに尽くしてくれたのだ。思えば僕は彼女にずいぶん甘えていた。
しかし、彼女には一つ、難点があった。
彼女自身には何一つ問題は無かったのだが、使用を終えて持ち運ぶ時に収納するケースに入れた時だ。
プラスティックのケースにサイズが合わないのだ。
ほんの数ミリ、ケースが小さく、508Aの本体が大きいのか?ケースが小さいのか?蓋がパチンと閉まらない…。
もちろんケースは実家(メーカーであるコールマン)から来た時の純正の銀色のプラスティックケースである。
ケースに入れてもなかなか蓋が閉まらない…。蓋を閉めたつもりで持ち上げると「ガチャン!」と落ちてしまう。仕方なくあわただしいキャンプの収納の時に、落とさないように、蓋さえ閉まれば片手で楽々持ち運べるものを、いつ落ちるか分からない彼女を壊れ物を扱うように両手で抱き抱えるように運んでいた。
先日、朝霧高原で雪のキャンプをした時、マイナス5度の気温でケースのプラスティックが冷えていたせいか?ついにケースに収納し、パチンとロックする事すら出来なくなった…。
僕は困った…。
何か、おかしいのでは無いか…?
何かが違う…。
本体のサイズが大きいのか?
ケースのサイズが小さいのか?
ほんの数ミリの違いが、思わぬ結果を引き起こす事がある。
「帰ったら、実家であるコールマンに相談してみよう…」
思えば僕と彼女の蜜月は、この時から新しい局面を迎えていたのかもしれない。
破局の始まりは、ほんの小さな出来事と、思いつきと決断から生まれる。
コールマンには、「カスタマーセンター」という部署があり、製品のメンテナンスや相談に乗ってくれる。
電話をして症状を伝えた。
「蓋が、ちゃんと閉まらないのです」
「持ち上げると、2回に1回はガチャンと落ちてしまいます」
「サイズが合っていないのでは無いか?」
「508Aの本体にはなんら問題はありません」
「とても役立ってくれています」
カスタマーセンターの方はとても親切で、電話越しにアレコレと僕に聞き、僕はスマホをスピーカーにしながら、両手でアレコレと彼女をなんとかケースに入れようと数分かけてトライしてみた。
ダメだった。
「梱包して、一度カスタマーセンターに送って下さい」
結局、カスタマーセンターに送る事になった。
実家に帰るのだ。
「2週間程度はお時間を頂きます」そう言われた。頻繁にキャンプをする僕だが、2週間くらいなら大丈夫。彼女無しでもなんとかやっていけるさ。
僕は、彼女を大切に梱包し、手紙を添えた。
「本当に素敵なバーナーです。とても役立ってくれています。ケースが合わないと、508Aを落として傷つけてしまいます。どうぞよろしくお願い申し上げます。」という趣旨の手紙だ。言われた通り、僕の名前と住所をちゃんと書いた。しっかり返送されて来なければ大変だ。
ちゃんと見てもらって、帰って来るんだよ…。
行っておいで。
元気になって戻って来るんだよ。
配送した。
先週の事だ。
2022年2月21日月曜日、コールマンが小包みが届いた。
カスタマーセンターからだ。
こんなに早く?
まだ1週間も経っていない…。
さすがコールマンのカスタマーセンター。
迅速すぎるほどの対応だ…。
ツルツルの綺麗な段ボールに収納されていた。
持ち上げると、いつものズシリと来る重量。
彼女だ…。
期待に胸を弾ませて開封する。
段ボールの中には真新しい箱。そうそう、新品の時にはこんな箱に入って売られていたっけ。
もう忘れてしまっているくらい昔の事のようだ。
胸が高鳴る。
箱を開けた。
真新しい銀色のプラスティックのケースが入っていた。
おお!コレが!彼女の新しいコートか!?
このケースがあれば、もう彼女を重い荷物でひしめくトランクから取り出す時に、雨でビシャビシャのキャンプで、ぬかるんだ地面に落とす危険も無く守ってあげる事ができる。
僕は真新しいケースごと彼女を取り出して、ピシッとはまった感触を楽しんだ。
少し振ってみた。
問題無い…。
面白いようにピッタリハマっている。
コレでもう、大切な彼女を落とす心配無くどこにだって連れて行ける…。
おかえり、僕の大切な508A。
万全となった今、久しぶりの対面をしようと蓋を開けた。
丸くてつるんとしたボディの感触と重量をこの手で楽しむのだ…。
ガクゼンとした。
中には、真新しい508Aの「新品」が入っていた。
中には手紙が添えられていた。(添付の写真だ)
「(中略)大変ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
早速ではございますが、弊社にて新しい商品をご用意させて頂きましたので、引き続きご使用いただければ幸いです。」
傷一つ無い、一度も火をつけた事も無いピカピカのプレート…。
妻がコートを取りに実家に帰ったら、若く、出逢ったばかりの姿になって戻って来た…。
今までの思い出や記憶を全て消して…。
今の僕の心境はそんな感じです。
あなたならどう思いますか?
僕が子供の頃憧れたルパンと次元の旅。
このシーンのように
暗い夜に温かな料理を作ってくれるのはバーナーだ。
ルパン3世「カリオストロの城」では、こういうバーナーが2回登場する。映画では形はナマスルに似ているが、508Aは僕の大切な旅の相棒だ。
#Coleman Japan
#コールマンジャパン
#アウトドア
#アウトドアプロデューサー
#アウトドアプロデューサーのお仕事
#アウトドアの学校
今までの思い出や記憶が全て消えてしまった妻はどうなってしまうのか?
続きはこちらです。
【コールマン508A スポーツスター】妻がコートを取りに・続編