2023年9月24日
【カナダで人探し】
【34年ぶり、手がかり無し】
【写真を持って聞き込み作戦】
【ノーアポで懐かしい人を探し出す】
34年ぶり、16歳の夏以来にカナダのオソヨーズを訪ねるのは、不安があった。
僕が世話になったホストファミリーの両親、ボブとシャローンは亡くなったと知っていた。息子のマークとは連絡は取れない。マークを知っている人はいないか?なんとか街でして聞き込みをして、マークを探すつもりだった。
微かな希望を持っていたのは、ドライバーさん家族だ。(ドライバーさんって苗字ね)
ドライバーさん達は大きなリンゴ農園をやっていて、オソヨーズの湖のほとりで静かな入江のところに家があった。親友のヤスヒロのホストファミリーだったので、僕は何度も一緒にその家族と遊んだ。ドライバーさんのお父さん、小柄なお母さん、同じ歳のステファニー、弟のスコット、妹のキャレン。
農園だから、場所は変わらないはずだ。ただ…、不安があった。Googleマップで見るとあの広かったリンゴ農園はブドウ畑に変わり、美しく静かな入江はヨットハーバーになっていた。場所が違うのか…?
16歳の僕とヤスヒロ、ステファニー、スコット、キャレンのきょうだい。
僕は、カナダに行く前に、何枚かの写真を選び持って来た。
マークやボブ、シャローン、ドライバーさん家族。ステファニーやスコット、キャレンの写真だ。
小さな街だ、人にこの写真を見せて、ドライバーさん家族を知っている人をなんとか探すつもりだった。
街は大きく変わっていた。
ビーバーが巣を作っていた湿地は、美しいホテルになっていた。街はリゾート地に変わっていた。
かつて僕が世話になった家は、改築されて新しい人が住んでいた。近くを歩く人に聞くと、「町役場か博物館で聞くといいよ」と教えてくれた。
町役場に着いた。
なんて説明しよう…?
受付のピンクのポロシャツを着た女性が出てきた。
僕はたどたどしい英語で、34年ぶりにこの街に来たこと。高校生の時にここで一夏を過ごした事。この写真の人たちに会いたい。探している。と言いながら、数枚の写真をカウンターに広げて見てもらった。
部屋に貼っていたみんなの写真。
すると彼女が金髪の笑顔で笑う少女の写真を指差して言った。
「ステファニー」
「え?(僕、写真見せただけで、名前言ってないよ)」
「私はステファニーを知っている。」
「ステファニーを知っているのか?隣はスコットだ、これはキャレンだ!ドライバーさん家族を知っているのか?!」
「私は知っている。ドライバーファミリーだ。ステファニーはここにいる。連絡先を教える。歩いて行くといい」
そう言って、役場の彼女はサブウェイの近くのステファニーがいるとおぼしきアドレスをメモに書いて渡してくれた。
ステファニーがいる?
会える。
どうしよう。突然行って迷惑じゃないだろうか?
僕にとって大切な思い出だけれど、ステファニーは僕のことなんて忘れちゃってるかもしれない。
何せ34年前に、夏の数週間だけ遊んだ、それ以来音沙汰の無い東洋人が突然訪ねるのだ。
覚えていても、冷たくあしらわれるかもしれない。
教えられた住所には、「オソヨーズ トラベル」という旅行会社があった。
おそるおそる入る。中には金髪の女性がいた。
この人がステファニーだろうか?何せ会ったのは16.7歳の時、僕もステファニーも50歳になっている。
「ハイ、何か御用?」
「こんにちは、僕はステファニーを探しています」
「アタシがステファニーよ」
やっぱりステファニーだった。
「ステファニー!!僕だよ、タクヤだ!34年前にヤスヒロと一緒に遊んだ、写真を見てくれ」
「この写真、私も持ってる!」
「会いに来たんだ」
ステファニーが立ち上がる、駆け寄ってハグをした。会えた。覚えていてくれた。目から涙があふれた。2人とも泣いていた。
それからステファニーと色々な話をした。
ボブとシャローンの事、ヤスヒロの事、マークの事、バンクーバーに住んでいるらしい。ブラッドのこと、スコットが消防士になっている事、キャレンはこの街でお母さんと同じ美容師になっていること。ドライバーさん家族の農園は葡萄に作物を変え、お父さんお母さんは引退して引っ越して、眺めのいい湖の近くの家にいる事(昨日泊まったホテルのすぐ近くだった)
ステファニー、素敵な笑顔は17歳のままだ。
「両親にも会いたい?連絡しておこうか?」
答えはもちろんイエスだ。
ステファニーとFacebookで繋がり、マークへの連絡を頼み、ドライバーさんのお父さんとお母さんの家に向かう。
お母さんは家の外まで出て待っていてくれた。
抱き合う、お母さんが僕の首にキスしてくれる。泣いている。家に上がってお父さんと握手してがっしりハグをする。
2人は引退して、素敵な家でゆっくり暮らしていた。
テーブルの上に、アルバムがある。ステファニーから連絡を受けて、出してくれたのだろう。
お父さんが言った。「あの夏は楽しかった。初めて外国から子供を受け入れた。私たちや私達の子供にとって、特別な体験だったんだ。」
アルバムを開くと、あの夏の僕達がいた。
僕が大切に想っていたあの夏を
この人達も大切に想っていてくれた。
同じ写真を大切に持っていてくれた。それだけで涙が出てきた。
不安だった。
会えないかもしれない。会えても向こうはどう思うだろう?
そのまま放置して、良い思い出としておけば良いのかもしれない。
でも、一生、心にひきづって、気にしながら生きるのは嫌だった。
また会おう、と約束して別れたままは嫌だった。
でも、こうして会えた。
もう一度会えた。
同じ気持ちで会えた。
忘れて無かった。
勇気を出して、カナダをもう一度訪ねて探して良かった。
次はマークと繋がって、ボブとシャローンに花を届けに行こう。
ドライバーさんが言った。「次は娘を連れておいで」それもいいなと思う。
嬉しいなぁ。お土産に持って来た手拭いをプレゼントしたよ。
#カナダ旅