私は、京都という土壌で2001年から自転車を利用した観光、いわゆるサイクルツーリズムに携わってきました。
取り組む上でポリシーが2つあります。ひとつは、顧客に「自転車という乗り物の高いポテンシャルを知っていただく」こと。もうひとつは、自分たちのまちをこの機能性に富んだ自転車移動により、きめ細かなまちの発展を促しながら、「我々の文化を深く、正しく理解していただく」ことです。
自転車観光の種類としては、サイクルイベント、レンタサイクル、ガイド付きサイクリングツアーの3つが挙げられます。この3つのうち、サイクリングツアーにおける顧客ニーズについて書いてみたいと思います。
私が京都で取り組むサイクリングツアーの顧客は90%以上が外国人で、特に欧米からの旅人が多く、約76パーセントを占めています。旅人はサイクリングツアーに参加して、何を見たいのか。彼らの旅行スタイルは、現地へ行って写真を撮って終わる、というものではありません。文化財を見に行くための手段として、自転車を選んでいるのでもありません。現地の生活文化を垣間見たいのです。どんな人がいるのかな、どんな文化があるのかな、どんな暮らしをしているのかなということに関心をもって旅をしています。だから、非日常空間での一つの触れ合いこそが彼らにとって旅の醍醐味なのです。
旅人がその地にもつ印象は、そこで出合った地元の人の印象で決まります。人と人です。だからこそ、自転車観光において自転車の無人貸出しや自動貸出しはタブーであると考えておりますし、お越しいただいたお客さまとのコミュニケーションは、顧客サービスの中でも最も重要で、難しい点だと意識して取り組んでいます。
私が京都で始めたサイクリングツアーは動き出すまでに10年かかっています。その10年間、京都の何を見せたらよいのか分かりませんでした。そして、辿り着いた答えが、地元の人の生活。だから、掛川の皆さんにも「これを見せたい」「これは自慢になる」というものを見つけ出してほしいのです。時には外部の目を通して掛川の魅力を探し出す努力も必要になるかもしれません。
自転車観光には3つの種類があると先述しました。実は自転車観光において、掛川はこれら全てが実施されている希少な土地なのです。掛川市の皆さんには、「地元の光」を自転車を使った観光を通して、より多くの方々に地元を知っていただき、掛川市の発展とまちづくりにもご活躍頂きたいと思います。
多賀 一雄