私は、場所をデザインして元気にする地域づくり活動をしています。地域の魅力、資源を見つけるために3つのキーワードが重要です。その1つが「場所のコンプレックス」。場所にはコンプレックス、つまり劣等感があります。東京や浜松と比較して、私たちの地域にはあれがない、これがない、と言って、都市のまねをしても本物にはなれません。コンプレックスは他との違い、その違いを認めると個性にできます。
場所コンプレックスとの対峙はダメだと思っていたこと、価値がないと思っていたことに地域活性化の重要な価値があることに気づくチャンスとなります。
2つ目は「場所の旬」。旬と言ったら普通は食べ物の話ですが、実は場所にもそこを楽しむ旬があります。日本には昔から、花見、もみじ狩り、月見など、場所の旬を食と共に楽しんできた場所遊びの歴史があります。「この時期はうちのこの地域が日本で一番美しい」と自分で勝手に発信すれば良いのです。ただそこにはデザインが伴わなければいけません。その場所を楽しんでもらうには、そのための仕掛け、しつらえ、デザインが大事です。
3つ目は、「場所文化」。これは、私のオリジナルの造語ですが、「場所」とは土地や自然であり、「文化」とは人であり、その知恵。この2つが融合して形成される地域の固有の価値を表す言葉です。「場所」は単なる地域という意味でなく、「自分がいる」ことと「今」というニュアンスもあります。
私たちは過去のものをありがたがりますが、そもそも歌舞伎だってロックやパンクのように江戸時代に若者たちが始めた新しいやんちゃなものでした。庶民がそれを楽しみ、維持していくなかで洗練され、その結果として日本を代表する文化としての今日があります。だから、自分たちの身近にあるものを新しいという理由で価値が無いとせず、未来志向で真の価値を見極めることをしていかないと地域の個性はどんどん失われ、100年後に今の時代を振り返ったときに、文化を何一つ生まなかった時代になるという危惧を持っています。変えていいモノと、変えてはいけないモノがあるので、それをきちんとグローバルな視点で峻別することも必要です。
場所文化は、日々の生活の中で使い続けて次の世代に渡すべきものです。保存したらその瞬間にダメになってしまいます。地域の宝をどう活かすのか考えるときに真面目過ぎてはいけません。真面目に考えていくと大体の場合、保存して守るということになりますが、楽しく使い続けることでその場所の生きた価値を維持していくことが重要です。
掛川にはお城があるので、そのお城を活用する場所のデザインがいいと思います。しかし、お城がある地域がやっていることは、お城の敷地や建物の中で何かすることを考えがちです。日本の古来からある借景ということで考え、お城を眺めながらおいしい酒を一杯やるといった、遊びの要素を加えて楽しむ方が広がりがでてきます。
掛川の地域の宝とは何か。掛川の場所自慢は何か。いつもとは違う視点で見ていくと、ごく当たり前のことに新たな価値を再発見することができます。皆さんは掛川市民であり、静岡県民であり、そして日本国民です。場所に対する帰属意識を広げていくことで、自分の地域の捉え方も変えていくことができるので、範囲を広げて場所との関わりとそこへの評価をしてみて欲しいと思います。
地域の豊かな未来は、どの時代も地域に暮らす人々の夢の中にあります。その意識をもって行動していきましょう。
後藤 健市