掛川というまちの、印象と交流と観光と

 


 

ここ数年、大量生産大量消費の図式が崩壊し、不要なモノを排除して必要最低限のモノで暮らすミニマリストや簡素&単純に暮らすシンプリストが増加傾向にある。ツーリズムも同じで(中国人観光客の爆買いは特例であるが)バスツアーに代表される団体旅行は徐々に衰退し、ナニを食べるか、ナニを観るか、ナニを体験するか、ナニに感じるか…など、明確な目的意識を持った旅人が増えているように思う。

 

自分にとって不必要だと思われるモノに対してはお金も時間も使わない。いや、それどころか興味も示さない。正直言って、受け入れ側にとっては難しい客である。だがしかし、地域固有の資産である「モノ・ヒト・コト」の活用を目指す掛川の流儀には好都合。地域の個性=地域ブランドはある意味でマスツーリズムと対局にあるミニマムツーリズム資産な訳で、今後、地域遺産としての価値が益々高まる様な気がする。

 

個人的なことで恐縮だが、ボクは1匹の魚を釣るために世界70カ国ほどを駆け回った。希少な魚だとか、特別大きな魚を釣りたかった訳じゃない。だがしかし、釣り好きのボクにとっては「たかが魚、されど魚」である。旅の目的なんて人それぞれ。たった1匹の魚の為に旅する人たちが世界中には沢山いる。釣りに限らない。パウダースノーを追い求めるスキーヤー、ビッグウエーブを追い求めるサーファー、食の奥義を追い求めるグルマン、未踏峰に命をかけるアルピニスト…。旅の目的なんて多種多様、旅の価値観も人それぞれ。

 

ちなみにボクは市内横須賀の後がけ焼きそばに驚いたし、甘いラーメンにも、黒いはんぺんにも、駄菓子屋でおでんが売っていることにも驚いた。一面に広がる茶畑にも、まるで古墳のようなモコモコにも、庭先でたわわに実るミカンにも感動した。居酒屋で酒を酌み交わしたり、自転車で走った仲間、そして個人宅の縁側でごちそうになった緑茶…その総ても旅先での大切な思い出である。

 

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先日、札幌のとある居酒屋で掛川の話題になった。

 

「掛川市は何処の県?」との問いに、「静岡県!」と答えられた人は少数派。また、新千歳空港から富士山静岡空港まで直行便が就航している事にも驚いていた。もっと「地理を勉強しようね!」と言いたいところだけれど、かく言うボクも6年前まで掛川市と埼玉県の桶川市を混同していたほど。反省!

 

居合わせた面々に「掛川市には山内一豊ゆかりのお城があって、新幹線(こだま)も停まるし新東名高速のインターもある。おまけに美の殿堂「資生堂」の企業資料館や、宮城まり子さんの設立した「ねむの木学園」、多くのミュージシャンを輩出した「つま恋」、さらには安産祈願で有名な三熊野神社、さらにディープなところでは茶草場という世界農業遺産に認定された農法の茶畑もあるのだよ…」と、にわか掛川観光大使よろしく掛川自慢。

 

地元では当たり前のことが、北海道ではまるで未知の世界。韓国やハワイに行ったことはあっても、静岡県、まして掛川市なんて行ったことも、行きたいと思ったこともない、なんて人が少なくない。これは北海道民に限らず、沖縄県民も同じかも知れない。いや、九州や東北の人たちも程度の差こそあれ似たり寄ったりのような気がする。居酒屋はともかく、ネットなどで不特定多数に情報発信する場合、掛川の前に「静岡県」や「遠州」を附するなど、「知ってて当たり前」ではなく「知らなくて当たり前」と思って発信することも必要ではないだろうか。

 


フォトジャーナリスト
チーム地結人隊長

残間 正之


1953年北海道生まれのAB型。辺境地の旅とフライフィッシング、を愛する。ロッドとカメラを抱えて世界71カ国を旅し、NHK(BS2)「世界つり紀行」やスカパー「釣りビジョン」「旅チャンネル」、NHK(BS1)「ほっと@アジア」等に出演。2010年春、心臓手術を機に38年の東京暮らしに終止符を打ち北海道で再スタート。主な著書に「だからロッドを抱えて旅に出る」「世界釣魚放浪記」「フライフィッシング・ハイ!」などがある。北海道で新たなローカルライフスタイルツーリズムを試行しながら、ガイドツーリズム・6次産業化のアドバイザーとしてたびたび来静。北海道札幌市在住。
掛川交流型ツーリズムネットワーク実行委員会
〒436-0029静岡県掛川市南1-1-1 JR掛川駅南口構内
掛川観光協会ビジターセンター「旅のスイッチ」内
TEL.0537-24-8711 FAX.0537-24-8701
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