もうひとつの視点から掛川を再発見!

 

東京学芸大学生とのエデュケーション・ツーリズム
モニタリングレポート

 

残間 正之

 


 

掛川駅でブリーフィング後、1時間ほどかけて山内一豊の治めた掛川城と御殿を見学。発掘調査にも関わったガイドの戸塚和美さんからブラタモリ顔負けのディープなお話をうかがう。また、御殿では正座して殿の気分を味わう。

 

二の丸茶室で煎茶を戴く。慣れない正座で学生さんのひとりが足が痺れて立ち上がれず、皆で大笑い。

 

報徳社で中田繁之さんの講義。二宮金次郎=二宮尊徳 学生運動賑やかなりし世代の自分にとって薪を背負って本を読む二宮金次郎の銅像には多少抵抗があるのだけれど、今の学生さんにとっては逆に新鮮。晩年は本を鍬に持ち替えたのが素晴らしい。国の重要文化財に指定されている大日本報徳社の大講堂はちょっと敷居が高いような気もするが、報徳の教えを分かりやすく解説した「心のスイッチ」でちょっと身近になりました。

 

車で移動。粟ケ岳の裾野に広がる茶畑で世界農業遺産に指定された茶草場農法を体験する。秋に刈り干ししたススキや笹をカットしたものを大きな袋に詰め、2人掛かりで茶畑の畝の間に敷く。当日は数年に一度の寒波に見舞われたが、日当りの良い東山の茶畑で寒さを忘れ大はしゃぎ。その後、東山いっぷく処で茶畑と富士山をおかずに添えて地元の農家さんが作った「のら弁」を戴く。

 

資生堂企業資料館&アートハウスにて日本の広告の歴史を紐解くような貴重な資料にふれる。70~90年代にかけて広告や雑誌に関わっていたボクとしては時間を忘れるほどの貴重な資料群。個人的には今回のツアーで最も充実したひとときでした。

 

街なか再生サロンにて意見交換会。

 

*大学生より
「そこに住む人がその場所を好きなんだな~と強く感じた」
「学生にも真剣に向き合い、優しく声かけてくれる」「何度来ても新しい発見がある」
「茶の文字が遠くから見るのと近くで見るのではまるで違った」

*残間より
世界各地を放浪していると、懐かしさを感じる街と何度訪れてもよそよそしさを感じる街がある。ボクにとって掛川は訪れる度に「また来たな~」ではなく「また戻って来たな~」と感じさせてくれる街だ。掛川市の人口は約12万5千人。一人一人が地域の魅力を発信し、一人が一人を招いておもてなしする。ロコ=Local=地域、マンツーマンなツーリズムのスタイルが有ってもいいと思う。

 

 

 

 

 

学ぶために体験すること
学ぶことは糧になること

 

東京学芸大学 1年

宮原 光

 


 

今回、モニターツアーに参加して一番心に残ったのは茶草場体験です。茶農家の方々に仕事について教えていただきましたが、皆さん誇りをもって仕事をされているように感じました。口で説明されてもわからないことも、今回は実際に体験することで、その仕事の大変さややりがい、楽しさを感じることができました。大変な作業でしたが有意義な時間を過ごせました。青空の下で体を動かすのは気持ちがよかったですし、美味しいお茶を飲むことができるのは見えないところで努力してくださっている人がいることを知ることができ、とても貴重な体験となりました。ただ、体験する時間や質疑応答の時間など、茶草場の方々と落ち着いて話をすることのできる時間があったらもっと濃い時間が過ごせたのではないでしょうか。

 

二の丸茶室では、お茶の正しい入れ方など全く知らなかったので驚きが沢山ありました。一回目に入れる時と二回目に入れる時で味が大きく変わることは知らなかったです。外の気温や湯呑の温度もお茶を入れるのに影響することも初めて知り、奥深いなと感じました。

 

ほかにも資生堂アートハウス・企業資料館や掛川城を見学しました。初めて行ったところではありませんでしたが、普段見ることのできない場所を見せていただくなど、新しいことばかりで新鮮でした。

 

 

今回のモニターツアーのすべてを通し、改めて学ぶためには実際に体験することが大切だと感じています。机に向かい知識を埋め込むのではなく、実際に体験して、実際にお話を聞くことで、より理解を深められ、地域の方々ともつながりを持つことができます。楽しみながら学ぶことで自分の糧になっていることを強く感じます。そんな楽しい学ぶ機会を設けていただけたことにとても感謝しています。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 遊びの場・学びの場・
つながる場 の価値

 

東京学芸大学 2年

松下 光

 


 

遊びの場・学びの場・つながる場 この三つはまさに今、私が活動している場の目標です。東京生まれ東京育ちの私にとって、掛川はそのきっかけや要素に溢れ、それが魅力であり価値だと思います。

 

 

【掛川城・御殿】
何度も訪れたお堀や天守閣。この場所を大好きな人(戸塚和美さん)に解説していただくと、こんなにも魅力的になるのか、と驚きました。知識が得られただけでなく、この場をここまで愛している人がいる、ということそのものに嬉しさを感じました。

【二の丸茶室】
その茶葉が育まれた土地で、着物の方に迎えられて茶室で飲むお茶はやはり美味しい、と感じました。

【大日本報徳社】
なんとなく入りづらさを感じていた報徳社。宗教的な施設ではないことを初めて知りました。いただいた冊子を、地元の子供たちにコピーして話しをました。伝えたいという気持ちが生まれた場所です。

【東山・茶草場】
とっても楽しかった!あんなに気持ちのいい場所があること、移動中に目に入ってくる茶畑の美しさは、素晴らしい価値だと思います。茶草場では実際に作業し、重さや香り、踏む感触など、自分の体にめいっぱい感じることができました。茶草場、茶文字を駆け回ったことは、言葉で表せない気持ち良さと、ワクワク感がいっぱいでした。

【資生堂】
帰路、ドキドキが止まりませんでした。初めて行った時も感動しましたが、館長さんの解説付きで鑑賞した資生堂企業資料館は、特別なものでした。

 

 

場所の価値は、その場所を愛している人から教えていただくことが価値なのだと理解しました。フォーラムで伺った後藤健市さんのお話が、実感をもって理解することができたツアーでした。そして掛川という場所がこんなに価値が詰まった場所であることに驚きました。

 

わたしは遊びの場=学びの場であると思います。その場所の楽しさを感じるとき、自分は自然と遊んでいます。遊びからたくさんのことも学びます。素敵だと感じることや、工夫すること、伝えることの大切さ、失敗することの大切さ…学ぶことは尽きません。

 

 

 

 

 

 クセになる、

「かけがわ」たび

 

東京学芸大学 1年

稲垣 晴菜

 


 

ひとたび、ふたたび、掛川。ひとたびの5月、ふたたびの8月、そして12月と1月。わたしは1年間に4回の“かけがわたび”をしました。豊かな自然と人の温かさの包容力に招かれて、クセになる掛川。今回の交流型ツアーから3つの体験を選び、感想を述べさせていただきます。

 

 

「分度」。身の程をわきまえた行動をとること。大日本報徳社で二宮尊徳の唱えた言葉を教わりました。「考え方を地域のものにする」という発想が斬新でおもしろいと思いました。思想が地域に根付いており、いまでも二宮尊徳の教えを尊重し教育に反映させている姿から歴史を大切にしている様子が伺えました。

 

東山地域の茶草場では、茶畑から海から富士山まで、フレームアウトするくらいにすべてが一望できる素晴らしい景色、まさに「絶景」を目にしました。茶畑の深みのある濃い緑と晴れた空の爽やかな青の色が気持ちよく、体全体で開放された気分。茶草場ではサクサクと足音を立てて、乾いた草の鼻をくすぐる匂いをかぎながら「いまわたしたちはお茶作りに関わっている…!」と思うと本当に嬉しくなりました。茶農家の方々のアットホームな空気感はこの自然豊かな東山のもたらす影響なのだろうな、と感じました。

 

資生堂アートハウス・企業資料館では、展示の解説やバックヤードの見学が貴重な体験となりました。自分の目だけで見て回っていた前回よりも、ガイド付きのアテンドで知らなかった知識が耳に入ってくることによって展示物に対する見方や思いに深みが増しました。資生堂の歴史がつまって美しいまま保管されており、素敵だなという印象を持ちました。

 

 

ツアーを通して、掛川の方々が守ってきたもの、大事にしてきたものに触れ、場所も人も「伝統的」 な温かさを持っていることが伝わってきました。歴史を大事にする姿勢に誇りを持って、古き良き落ち着きが保たれることを願っています。

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